2022年7月8日金曜日

レーザー/ILCA、マスターズワールドへの旅  2022

2022年のマスターズワールドは6月にメキシコのPuerto Vallartaで開かれるらしい、という噂を耳にしたのは1年前の6月上旬のこと。そこは私が6年前に初めてのワールドに挑戦した場所で、その時の経験がとても充実して楽しいものだったことから(この時の経験は以下に書きました。 http://toshinari.blogspot.com/2016/05/2016.html)、当時まだCOVIDで海外への渡航が制限される中も、「あそこでやるなら是非また行きたい!」と強く思うようになりました。そして6月下旬にはそれが本決まりになってILCAのホームページにポストされると、「ようし、次の目標は決まったぜ!」(ルパン3世風)と、それからの約一年はほぼ毎週末海に出て練習し、特に最後の2ヶ月は、(自分の普段の体重は65kgとILCA6セイラーとしてもかなり軽いので)体重を2kg増やすこと、そしてハイクアウトベンチでのトレーニングを12分できるようになることの2点を目標に加え、この2つをなんとか達成した翌日にメキシコへと飛び立ちました。前回の初めてのワールドでは、その夢の舞台に立つこと自体が目標でした。6年後の今回は、世界のトップセイラーとどこまで競えるか腕試し、目標は10位以内、調子が良ければ5位以内!、と秘めた闘志を胸に現地入りしました。

[メキシコでの大会は、天気が良く、暖かく、海もきれいで、ヨットに乗るのがとても楽しいコンディションでした、風があまり上がる前までは。。。そのうちにはJPNの国コードを付けて乗れたらいいなと思っています。]

[ハーバーはホテルのすぐ隣。部屋のベランダからはボートパークに艤装されたボートが並んでいるのが見えます。]


現地での練習と事前に集めた情報では、レース海面は、基本的には3月から6月の上旬までは午後になると内陸部が熱っせられてそこに風が吹き込む、このサーマルによる風は12時ごろから吹き始め、1時ごろに5m/sになり、それが右に回りながら徐々に強くなって、3-4時ごろには8-9m/sくらいまで上がる、このサーマルによる風が確立して安定すると風がベンドしている傾向があることから右海面の方が有利、しかしそれ以前は左海面の方が有利なことも多い、というものでした。しかしILCA6よりも前に開かれていたシニアのワールド、ILCA7のマスターズワールドではこのパターンに当てはまらないことが多かったとのことで、また6月中旬になると夜に雷雨になることもあり、するとそれが内陸の温度を上がりにくくしてこのパターンをさらに乱す原因になり、結局は「蓋を開けてみないと分からない」ということでした。なので私が立てた基本作戦も、「有利なエンドからのグッドスタート、そしてクリーンエアーでグッドスピード!」という極めて当たり前のものになりました。しかし7m/s以上の風が確立している場合は、集団の中での上りのスピードに自信が持てないので、「そうなったらできるだけフリーで走るために、確率の高い右海面に早めに突っ込む」というのも作戦に加えました。


迎えたレース初日。第1レースは5m/sという得意の風の中スタート。やや高かったピンサイド3、4番目くらいから合格点のスタートを切ると、風はその後やや左シフト。左手のボートに対してレーンをキープするのが難しくなって来た中、右手のボートがタックしてスペースが空いたのを機にタック。風はその後さらに左にシフトし、ロングタックになったポートをクリーンエアーの中スピードに集中してひた走り。すると周りのボートよりもスピードがあり、上マークをなんと2番で回航。ちょっとドキドキしながら下りの走りに入りましたが、この下りの走りにもスピードがあり、3位以降の集団との差をかなり広げて、ゲートマークには1位のオーストラリア艇とほぼ同時に到達。残りのレグもこのオーストラリア艇(名前はDavidさん)とトップを争いながらも落ち着いて走り、この第1レースを2位でフィニッシュ。予想以上の手応えを感じました。しかし第2レースが始まる頃には風はかなり上がって8m/sくらいになり、海面には白波も広がっていました。「そうだよなー、そう都合よくは行かないよなー」と気持ちをリセット。この風域では上りでのスピードに自信がないので、ボートエンドからスタートして早めに右に行くという作戦を実行。すると上マークは10番くらいと予想外にいい順位で回航。得意の下りの走りでは1、2艇を抜き、次の上りでもコミットして右に突っ込み、2上は4位で回航。リーチレグで1艇に抜かされたものの、5位でフィニッシュ。結局、初日は2位という、周りも驚いたが自分が一番驚いた、という素晴らしい結果で終えることができました。

[初日第1レース、得意の軽風の中、2位で第一上マークに向かうところ。]


[混戦の第2上マークを抜けてリーチレグに入るところ。吹いた中でのリーチングはスプレーを浴びっぱなし。でも海水が暖かいので全然平気。]



しかし、それに自分で驚いている、ようではやはりだめで、現実はそう甘くなく、2日目には大きくスコアを崩し、その後のレースでも自分の実力相当の10番前後の順位を取ることが多くて、結果的にはこの大会をGGMフリート24艇中11位という、当初の目標には1番足りない成績で終えることになりました。それでも、全レース今の自分の持てる力をフルに出し切って走ったので、この結果には誇りを持っています。また、今回の大会では、自分的に初めての経験をしたり、今後につながる多くのいい面や新しい面を出すことができました。まず第一に良かったのは、6日間に及ぶ全12レースを体調を維持して走り切れたこと。まだ残るCOVIDの影響や、暑さ、時差、食事の違いなどから体調を崩す選手も少なからずいる中、自分も睡眠不足と軽い熱中症のような症状で一時体調を崩しかけましたが、なんとか持ち直すことができました。次に、多くのレースでいいスタートが切れたこと。これは今までスタートがあまり得意ではなかった自分にとっては大きな収穫でした。5日目の第1レースではピンエンドスタートを成功させて頭一つ抜け出し、すると右後ろから今大会で優勝したAllanさんが、「おっ、やりやがったな! :)」、みたいな感じで、”Toshi!!!”と大きな声をかけてくれました。実は次の第2レースでもそれ以上のピンエンドスタートをし、直後ににタックしてスターボード集団の前をクロスするという快挙を成し遂げましたが(これは初経験)、このレース、UFDリコールして失格になっていました(これも初経験)。ビデオを見ると、ほんの僅か早めに出てしまっていたようです。そしてレースコースの随所で世界のトップセイラーと競い合うことができたこと、さらに何レースかではとてもいい順位でフィニッシュができたこと。また、風速が9m/s近くと今大会で最も上がった4日目の第2レースで1上をトップ回航したこと(これも初経験)。コース取りが良かったのが主因でしたが、上マークに一番で到達した時には、「えっ、マジ!?」となりました。これは強風の苦手な自分にとっては大きな自信になりました。そして、6年前の大会でもそうであったように、この大会で前からの友人と再会でき、そしてまた新しい友人を作れたこと。お互いの健闘を讃え合い、また次の大会での再会を誓い合ったのでした。うん、今回もよかった、楽しかった!

[コミッティボートサイドからのグッドスタート。本大会ではいいスタートを多く切ることができました。]



こうして充実感を持ってこの大会を終えることができましたが、それでも、自分の力が及ばなかったという失望感や、あそこでこうしていれば結果は違ったのに、というような後悔の思いも正直あります。でもそれについては、またもっと練習して、「この借りは次の大会で返すぞ!」、と思っています。約1年かけてこの大会に向けて準備して来ました。その旅は一旦ここで終わりましたが、旅は次の章へとまた続きます!


[表彰式後、レジェンドクラス優勝のChris選手を囲んでの写真]


[レース委員長のFranciscoさん()と、レースコースのあちこちで順位を競い合ったNigelさん()。ちなみにチョコレートケーキ三つは取り過ぎでは?]