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ゴールデンゲートをバックにセーリング(US Masters) |
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トレーラーでShoreline Lakeに到着 |
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Shoreline Lakeでのフリートレース |
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フリートレース後の着艇風景 |
と、普段は比較的穏やかなセーリングライフを過ごしている私でしたが、今年のUS Mastersは8月にサンフランシスコで開かれるということを知ってからは、「うーん、出てみよかなー」と心がざわつき始めたのでした。夏のサンフランシスコ湾と言えば風が吹くことで有名で、昨年はアメリカズカップも開かれた場所。当然波もかなりある。体が小さく、普段、順風、波のない湖面で乗っている自分には敷居がかなり高い。しかもレースは3日間。体力が持つか?実は何年か前にもサンフランシスコで開かれるレースに出てみようかという考えがよぎったことがあったのですが、その時は、「いや、ないない!」と即座に考えを否定したのでした。ただ、その時に、「まあいつかはやってみたいけどね」と思っていました。今回も「まあ、いつかね」と思いかけたのですが、「でも、いつかって、いつ?」 今年はレーザーにほぼ毎週乗っている。ヨガ、水泳も定期的にやっていて、体力もなくはないはず。艇も昨年マストホールの修理に成功して、水も全然入らなくなった。休みも取れる。今やらなきゃ、いつやる? というわけで、エントリー締め切りまでギリギリまで迷いましたが、出ることにしました。一週間くらい前からサンフランシスコの天気予報をずっと気にしていましたが、予報では、「午前中は軽風、午後から風は上がるけれども最高でも8m/sくらい」、というもので、こりゃ案外吹かないかも、うひょひょ、と内心期待していました。
で、レース初日、ハーバー到着。朝から全然吹いてるじゃん。。。 10m/sオーバー(゜Д゜;) 周りを見ると、セールにUSA、GBR、CAN、AUSなど国名のマークが入ったセーラーも多く、艤装、セーリングギアを見ても、気合の入ったおやじたちが集まっている様子。「だけど、こっちだって吹くと分かっていて来てるのだ。気合だって入ってるのだ!」、と口をキッと結んで出艇。カイトボードセーラーもあちこちですっ飛んでる中、レース開始。上りは当然艇を起しきれない。そしてチョッピーな波でバウを叩かれてすぐにスピードが落ちてしまう。うっわー、やっぱりしんどいなー。腕も太腿もプルプルしてくる。タック時にブームが頭にかなり強く当たったけれど、痛みを感じている暇もなし。下りではセンターケースから水が噴き出して来るのを久々に味わう。沈をすると体力も気力も消耗して危険なので、ひっくり返らないように全神経を集中してティラーを操作。もうちょっとバングを緩めたい、と思っても怖くて手が前に出せない。後ろにいるのは2、3艇だけ。こんな感じで3レース。ヘトヘトになりました。でも、下位争いをしている艇同士、すれ違う時に目が合うと、「あんたもこんな風の中よくやるねー、ははは」という感じでお互いニヤッと笑い合う、というのがなかなかいい感じでした。
二日目。朝、微風。湾にはカヤックが出てのんびりと進んでいる。当然レースはまだやらない。昼頃、軽風。「この風ならレースできるじゃん、やろうよ!」と叫んでも(心の中で)、コミッッティーは、やる気配、全くなし。無情にたなびく回答旗。結局1時過ぎ、ゴールデンゲートブリッジの方からドーンと風がやってきて、カヤックがカイトボードに代わる頃、レース開始。結局昨日と同じようなコンディションで3レース。この日は沈も一度してしまい、全くのビリにもなりました。でも参加することに意義があるのだ。
三日目。朝、起きると、体はあちこち痛むし、疲れで顔がむくんで土偶状態。今日はちょっと無理かなー、との思いも頭をよぎったけれど、ストレッチなどで体を整え、朝ごはんを食べるうちに、やれそうな気もしてきた。出艇してみると、体も、走らせ方も、ちょっとこの風に慣れてきたような感じもある。よーし、やったろうじゃないの、と半分やけっぱちで艇を走らせると、不思議とちょっと楽しいような気もしてきたぞ。よく整備された信頼できる艇で走れるのは気持ちもいい。結局、二日目と同じようなコンディションで3レース。成績はビリの方でしたが、サンフランシスコの強風の中、3日間全9レースを完走できたことに自分ではとても満足でき、大きな自信にもなりました。やってみて良かった。
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前はサンフランシスコの街 (US Masters) |
こうして私のこの夏の挑戦は終わりましたが、レースには、グランドマスターズ、ワールド11回優勝というピーターという選手も出ていました。体もそんなに大きくない。レース後、「こういう風、波の中、どうやって走らせているのですが?」と尋ねてみると、「やっぱり艇をフラットに保つことが大切だね。そのためには大きなシート操作、体の動きが必要。ハイクアウトで強く体を外に出すことはもちろんだよ。特に君は体が小さいんだから尚更だ。」「やっぱ、それですか。(楽して乗る方法はないのね)」「まあ、でも君も結構走ってたじゃないか。再来年、いや、来年かな、サンタクルーズ(これも家から2時間くらいの距離)でまたUSマスターズがあるから、そこでまた会おう。それとも、その前にメキシコでかな?」「えっ、メキシコ?ワールドのこと?? いや、それはないない。」
しかしその会話のしばらく後、「ワールドか、いつかは出てみたいなー。そう言えば野比の仲間とも昔そんな話してたな。。。でも、いつかって、いつ?」 というわけで、また心がざわつき始めているのでした。
しかしその会話のしばらく後、「ワールドか、いつかは出てみたいなー。そう言えば野比の仲間とも昔そんな話してたな。。。でも、いつかって、いつ?」 というわけで、また心がざわつき始めているのでした。
早いもので、私ももう3年するとグランドマスターズになりますが、緑色の私の艇、Voyager Iもその頃には「マスターズ 」の歳になります。長い付き合い。学生時代、この艇に乗り始めてから海外の世界に眼が行くようになり、今私がシリコンバレーにいるのも、ある意味この艇との出会いがあったからだと思います。冒頭、「シリコンバレーにこの艇を連れてきました」と書きましたが、艇の方が私を世界のあちこちに連れて行ってくれた、という方が正確かもしれません。そして色々な人との出会いを作ってくれました。これからも一緒に長く走りたいと思っています。
2015年8月、シリコンバレーより。
旧野比フリート、現Shoreline Lakeフリート、高柳俊成
[この文章はレーザーニュース SEP./2015 No.222に載せてもらったものです]
旧野比フリート、現Shoreline Lakeフリート、高柳俊成
[この文章はレーザーニュース SEP./2015 No.222に載せてもらったものです]
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